人生はいつだって、Aからはじめられるのだよ。
出会いも、別れも、なんだか丸福珈琲だ。
タバコの煙のもくもくするなかで、みるく珈琲に角砂糖ひとつ。ぐるぐるかき混ぜてるうちにぐちゃぐちゃになったり、無言が続いたり、ぐるぐるかき混ぜてるだけで、ただ、冷めていったしょっぱいみるく珈琲を私は何杯も経験してきたような気がする。このあいだリカの採用を継げた丸福珈琲で、その日は、えいくんの転職の決意を聞いていた。28才でバイクの整備士から、グラフィックデザイナーに転身してきた彼が、自分にやはりもっと正直に生きていこうとするなかで、やはり、大好きなバイクの整備士にもどるという。
昔、マスターキートンという漫画があって、何巻だったかわすれたけど、因島の実家のベッドの本棚にずっとあったので、帰省するたびにその漫画をみていたのだけど、そこに、「人生はいつだってやり直せるのだよ」という言葉があったから、私は、それをずっと心に刻んでいた。自分のことをふりかえれば、23才でコピーライターの門をたたいて、25才でプロダクションに入って27才で東といっしょにデザインの会社をつくって、そしてつぶして、
32才で188を立ち上げてきたのだから。それはひとつひとつが自分の決断。
だから。だからってわけじゃないけど、
それは年齢とかじゃなくて、“思い”だ。
人生はいつだって、Aからはじめられるのだよ。
ゼロになる勇気を持ってるやつは、強い。
みるく珈琲に角砂糖ひとつ。
ぐるぐる。ぐるぐる。