ド阿呆春団治の町


super001大阪ミナミに嫁にきた。15年が経つ。ダンナの婆ちゃんは、昔、細うで繁盛記さながら千日前坂町「料亭菊水」の女将だった女。三味線や浪曲が達者だったらしいが、ホントかどうか知らない。ともかく私は、瀬戸内海の美しい島「因島」から、ミナミのディープゾーンに嫁に来て、ついでに仲間と立ちあげたグラフィックデザイン事務所も同じ場所に移した。さらに2年前、二匹の柴犬「まめとみつ」を迎えてからは朝な夕な道頓堀を散歩する日々。もともとアウェイが苦手な私は、このミナミが愛すべきホームグランドとなるまで時間がかかったが、二匹に連れられて歩くうちに、風俗の呼び込みのオッちゃんも、焼き肉屋の大将も、駐車場のバイト君も、酔っ払いサラリーマンも、キャバクラのオネエチャンも、あっという間にまめとみつの友だちになり打ち解ける。さて、そんな日々のなかで今日は、私が大好きなミナミの風景を紹介しよう。京都の鴨川にカップルが等間隔に座っているというのは有名だが、ミナミでは道頓堀の川べりに芸人の卵クンたちが二人ずつ並んで、夜遅くまで漫才やコントのネタ合わせをしている。ファッション・ショーのリハにあけくれる服飾関係の学生グループも多い。湊町リバープレイスのデッキで休憩していると、卵クンや卵チャンが次々にまめとみつと遊んでくれる。犬トークを交わしながらも、彼らがどんなユメを持っているのか職業柄ついインタビューしてしまう。「コンビを組んで3ヶ月です!」「将来は、さんまサンみたいな人になる!」「ボクのキャラ、どう思います?」・・・にわか人生相談が始まることも。もちまえの女将気質で、応援しな~と使命感に燃える。だって、ミナミは古くからの芸の街。「芸のためなら、女房も泣かす~♪」の浪速恋しぐれ、ド阿呆春団治の街だ。「あんたが日本一の噺家になるためやったら、うちはどんな苦労にも耐えてみせます~♪」っちゅうて、ド阿呆男のユメを支えるのは浪速女のロマンやないですか?うちの会社(株式会社一八八)のシゴトのほとんどが舞台芸術のグラフィックデザインであることも、古えのご縁だと感謝している。芸人しかり、役者しかり、デザイナーしかり、ミナミの街にはまだまだモノづくりに情熱を燃やす男や女がようさんいてると思うなあ。ちなみに一八八の社訓は、「好きなことしかできませんし、好きなひとしかできません」。迷ったらそこに戻ればいいだけ。

さて。今夜もまめとみつと連れだって、日本一のド阿呆男を探しに行こう。

 

 

photo/Tokuharu Yamada(500G)

 

掲載記事はこちら