小さい頃、うちにもアップライトピアノの上に
メトロノームがあったような気がしたけど、本来の目的をもって
使われていたかどうかは定かでない。
どうしてもほしくて買ったストップウォッチは海の中でどれだけ
息を止めていられるかを競うために主に使われていたくらいだから、
メトロノームもその程度の用途にすぎなかっただろう。
グラフィックデザイナーの先輩、黒田武志さんの作品展
「ナマエのないカタチ」。伊丹市の酒蔵。
途中、メトロノームのゆったり、いや、もったりともいえる等間隔のカチカチという音に
後ろ髪をひかれるようにして立ち止まってしまう。
心臓の音が、はやくなるのだけど、メトロノームは私の心臓の音をできるだけ
こちらにあわせるほうが生きていくのにいいですよと
いわんばかりに、ゆったり、もったり、カチカチ、している。
生きていくのにいいですよ、
これぐらいのバランスがあなたにはちょうど、人にはちょうどいいんですって。
みなさんちょっと早すぎますって。
どっちにせよ、終わる時には終わるんですから、どうせ刻む命なら、
これぐらいがおすすめですよ、というような
いや・・・そんな押し付けがましいものではないのですが、
じーーーーーーーーっとしていたくなるような作品の音がしていた。
最終日とあって何人か知り合いに出会う。
「ああ、みかさん。ひとり?」
「うん、いなーきもひとり?」
「せやねん。2時間ぐらい、ひとりでぼ~っとしてた」
「こういうのはひとりがええよね。わかるわかる」
おんなじぐらいの
メトロノームで生きているこにあって、
ちょっと嬉しくなる。
メトロノーム、はやくなったり、おそくなったり、そういえば、
あのひとの
メトロノームはいつも一定。