35年。

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とある京都の撮影スタジオ。レトロでお洒落なビルの4階に
昔かたぎのカメラマンK先生と、営業事務一式をとりしきっている奥様がいらして、
きょうは1年ぶりにお邪魔して着物の撮影をお願いしたのですが、
きょうは1年まえとは違う、特別すぎる1日でした。
ご夫婦共にからだを壊されて、事務所をたたむ事になったのです。それで、
きょうが実質、このスタジオでの最後の撮影。
わたしは、この写真の奥様の気風のよさ、さっぱりとした物言い、上品さと厳しさをかねた人柄が
ひと目で気に入ってしまっていて、一度しかお会いしたことがなかったのに
きょうはとてもせつない気分になったので、
仕事をいっしょにしている、Wちゃんに相談。

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「ね、最後にいっしょにお花ぷれぜんとせ~へん?」

「あ、いいですね。買いに行きましょ。私もなんか、せつないんです」

ってことで。撮影後、
Kさんの奥様におつかれさまと、母の日などをこめて、
カーネーションの鉢植えをプレゼントしました。

なんだろう。
人生のなかで二度しかあったことがない方なのに、こんなにも、この女性の人生を
ねぎらいたいと思うのは・・・。誰かに似ていると思ったのかもしれない。
近い人かもしれない。懐かしい人かもしれない。私がまだコピーライター1年生だった頃に、
使いっぱしりで何度も弁当を買いに行かされたあの写真スタジオに
雰囲気が似ていたからかもしれない。


写真をやめるわけではなく、引っ越して少し荷物を軽くするだけなの、と
奥様はおっしゃる。

なんてことはない日常のなかで
35年の幕が閉じた。

2009年4月29日 01:20  |  
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