トアロードにある木馬には、
わたしのなかの神戸がある。マスターは今日も、
いらっしゃい、みかちゃんといって
珈琲豆を挽き始める。
ひさしぶり、マスター、といっても、とくにひさしぶりとも
思っていないようなふんいきで、
珈琲を飲みながらぼそぼそとおしゃべりがはじまる。
無口なのにおしゃべりだし、
おしゃべりなのに無口なひとだ。
とってつけた相槌うちたくないかんじなのですね。
ほら、あれですよ
奈良の展覧会、あのことばはよかったね。
あれは彼女にほんとうにぴったりだし、
いまの時代にぴったりだ
あなたのなかに、あーいった部分もあるのですね、
情念的なことばでもないにもないのに、
純粋であれはよかったなあ
ときどきこうやって、
誰かに、本当に信じている誰かに褒めてもらえるなら
それでええやん、とおもう1日。