「私の海」といえる場所が、
同じ因島のなかでもそれぞれにたぶんあって、
私は私の家の裏の海が、絶対的な場所なのですが、
母も同じとは限りません。
母の海は、「私の海」の対岸にあって、子供のころの冒険の場所はすべてそこだったと
思うのです。さあ、今日はまめといっしょに、母の「私の海」に行ってみましょう。ね、まめ。
歩いて、15分もかからない場所でありながら、特に用事もなく、つねに
対岸から見るばかりの場所でした。母のお父さん、勝樹おじいちゃんがよく散歩をしていた
場所のように思います。私の「私の海」を今度は対岸にみるという景色。
この湾となった海をはさんで、父と母は恋をしたのだとおもえば、
たいそうロマンティックです。
ただ、ここでは母のもっと子供時代にタイムスリップしてみたく、
岩場の多い入り江をまめとぐんぐん、探検してみました。
まめさん、でこぼこの岩場もへっちゃらで、どんどん探検です。フナムシを追いかけ、
アオサやモバを踏みつけて、ぐんぐん、ぐんぐん。
「ママ、ここがおばあちゃんの海なの?」
「そうよ、すっごく面白いでしょう」
「すっごく面白い。ねえねえ、もっと登ってみてもいい?」
「ふう、おもしろかった~。
ねえねえ、ママ。砂って、冷たくってきもちいいね。
ちょっと眠ってみてもいい?」