なつかしいあなた。
きのう逢いましたのにもう
なつかしいあなた。
これは、「ぼくらは簡単なことばで出来ている」に
収録されているこのことば。
恋歌に思うだろうか、それとも、郷愁歌に思えるだろうか。
バアの部屋で、ジイを待つ。
ジイがバアの胸にサロンパスを貼り、
きょうもう髪を梳かしてやる。
ジイはまだか?
ジイはまだか?
他になにもすることがないバアは、
私になんども、あんたはどこからきたん?と聞く。
子供は何人おるんか?と聞く。
ジイはまだか?
ジイはまだか?
人生最後の恋歌なのだろうね、やはり。
なつかしいあなた。
ねえ、あなたはやくきてください。
さみしい。
さみしい。