「まめとみつ」- コピーライター村上美香&「柴犬まめとみつ」のコトバ・グラフティ。

まめとみつ


PROFILE/MIKA MURAKAMI@188《コピーライター》
瀬戸の海を産湯に、波を子守唄に育ち、大阪はミナミの繁華街・坂町に生息する女コピーライター。藤原新也の「人間は犬に喰われるほど自由だ」を敬愛し、「はて。ほんとうに人間は犬に喰われるほど自由か?」と日々思い巡らしながら、2008年2月よりひょんなことから柴犬まめと暮らす。はて。きみにほんとうに伝えたいコトバはなんだろう。そんな、きみとわたしのこれからブログ。

さちろう帖vol.1

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美香「ねえ、お父ちゃん。いちばん小さいときの記憶ってなに?」

サチロウ「3つか4つか・・・旗を振ったときよのぉ。オヤジが出兵するときに。もーやん(お守り)に負われてのぉ、東の浜の桟橋で旗を振りょったら、その旗がぽとん、と地面に落ちたんよ。ほんで誰かがひろうてくれて、また旗を振ったんじゃけど。福造おっさんは(サチロウの兄)は、牛に乗せてもらったりして、幸夫おとうさんにかわいがってもらった記憶があるんじゃけど、わしは何も覚えてないけのぉ。その、旗を振って、ぽとん、と旗が落ちて。その瞬間を妙に覚えていて、それがオヤジとの別れじゃったんかのぉと後からおもうたんよのぉ。20年が終戦で、親父が小さい白い箱に入れられて戻ってきて、そのときは、芋を薄切りにしてゴザに干して、粉するような作業をしよったんじゃけど、良子おばあさんが、ぽろぽろ涙をながしよったのを覚えとる。ふくただおっさんが箱を抱えとった。わしと、福造兄さんは、この箱の中にオヤジがおるんじゃって、ゆうて、こっそりふたりで蓋をあけたんよ。ほしたら、爪と髪の毛がちょこんと入とったんよのぉ」

父のほんとうのお父さんは、戦死した。「レイテ島にて死す」と、重井町にあるお寺のさんかくのお墓に刻まれている。「さんかくになったお墓は、戦争で亡くなった人のお墓なんよ」と教えられてきた。父のユメは、いつかレイテ島にいくことだ。

2018.05.18  吹田 徳州会病院 南館655室

2018年5月18日 22:05  |  
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