PROFILE/MIKA MURAKAMI@188《コピーライター》
瀬戸の海を産湯に、波を子守唄に育ち、大阪はミナミの繁華街・坂町に生息する女コピーライター。藤原新也の「人間は犬に喰われるほど自由だ」を敬愛し、「はて。ほんとうに人間は犬に喰われるほど自由か?」と日々思い巡らしながら、2008年2月よりひょんなことから柴犬まめと暮らす。はて。きみにほんとうに伝えたいコトバはなんだろう。そんな、きみとわたしのこれからブログ。
私がこどものころから父と母は
スイカを収穫して、そのままトラックにのせて
スイカ売りにいく。
そこには私の知らない、「スイカ屋さん」としての顔をもった
父と母の姿がある。
「昔は何件も、飛び込みでスイカこうてください、とまわったもんじゃ」
今日の販売エリアは、三原。
尾道のとなりの市で、因島からは車で30分ぐらいかな。
朝5時から、畑で収穫したものに値段をつけて、
そのまま午前中に三原のお客さんのもとに。
ここには、両親が何十年もお世話になっている
「お客さま」がいる。
「お客さま」の前での母は、いつもの母のようで、いつもの母じゃない。
お父ちゃんのつくった自慢のスイカを
一生懸命に売り歩く「スイカ屋のおばちゃん」だ。
親子三世代で、ず~っと大口で買ってくれている家がある。、
おばあちゃんとおばちゃんと、その娘さんが赤ちゃんだった頃から、
お嫁さんになるまで知っていたりして、
「スイカ屋のおばちゃん? わあ、久しぶり」
「わあ~~○○ちゃん、かえってきたん?」
お母ちゃんはいう。
「ほんでも、三代目以降がつづかんかもしれんね」
お父ちゃんはいう。
「明日やめようかいうもんが、三代目から先の心配してどうするんな!」
お母ちゃんは娘さんの名前、犬の名前、もちろんそのお客さんの名前を
ちゃんと覚えていて、
たくさん話をする。お母ちゃんを可愛がってもらった人たちはもう、かなりの
おばあちゃんおじいちゃんになっていて、
お母ちゃんがいくと、たくさん話をする。忙しくても、話につきあう。
「あんたのとこのスイカしか買わんよ。
今年もまちょったんじゃけね。」
「ほっぺがおちそうなぐらいこのあいだの美味しかったよ」
「広島におる娘がねえ・・・」
「足や腰がいとうて、いま病院からもどったとこよ」
「孫や子どもにあげるけんね、5つちょうだい」
昨日今日ではできんのよ、とお母ちゃんはいう。
ここで会うすべての人たちに、お母ちゃんとおとうちゃんはかわいがって
もらいながら、一軒一軒スイカを売り歩き、
私や弟たちはおいしいごはんを食べさせてもらってきた。
ほとんどが常連さんのおじいちゃんとおばあちゃんで、
街の景色も変わったし、賑わっていた商店街や長屋も人がまったくいなくなった
という。それでも何年ぶりかにぐうぜん出会う人もいて、
「なつかしいね。あの頃はね・・・」とまた話に花が咲く。
1つでも多く売りたいお母ちゃんは先に急ぎたい気持ちはあるのだけど、
おばあちゃんの長話にたっぷりつきあう。
お父ちゃんは車で待つ。
きょう、若いママさんが日傘をさして通りかかったので、
こんにちわ、と挨拶をした。そしたら、しばらくして、お子さんといっしょに
「ね、ほらやっぱりスイカ屋さんでしょ?」
といって、トラックに近寄ってきた。
「最近このあたりに引っ越してきたのですが、スイカ屋さんなんて、
みたことなかった」
今頃、ボクといっしょにスイカ切ってる頃かな。
スイカ屋さんに未来は、
きっとある。
人の繋がりと情。そこにはやっぱり愛があって。。。
おかあちゃんとおとうちゃんの様子にあったかい気持ちで。
胸にきゅーってきて涙がでたよー。。
みかさん,ありがとー。