「まめとみつ」- コピーライター村上美香&「柴犬まめとみつ」のコトバ・グラフティ。

まめとみつ


PROFILE/MIKA MURAKAMI@188《コピーライター》
瀬戸の海を産湯に、波を子守唄に育ち、大阪はミナミの繁華街・坂町に生息する女コピーライター。藤原新也の「人間は犬に喰われるほど自由だ」を敬愛し、「はて。ほんとうに人間は犬に喰われるほど自由か?」と日々思い巡らしながら、2008年2月よりひょんなことから柴犬まめと暮らす。はて。きみにほんとうに伝えたいコトバはなんだろう。そんな、きみとわたしのこれからブログ。

万里子の社長就任。

万里子が社長になった。きのうからとかく涙腺がゆるい。出かける準備中に
携帯から地震を告げるアラームが鳴って、大急ぎで3階にかけあがると
鳥取だという。中国地方。ユナの顔がうかぶ。
昨日取材にきてくれた日日新聞の方も鳥取に赴任してたという。
第九で出会ったおじさんも鳥取と大阪を往復してる人だった。
マチオモイカレンダーの梨農家さんも鳥取。
幾人かの顔が同時に浮かんで、そして、島の仲間たちにライン。
「みんな大丈夫?」
「ぼくは大丈夫です」「重井、大丈夫です」「土生と田熊、大丈夫です」
「広島駅大丈夫です」「古い建物なのでだいぶ揺れたけど、因島大丈夫です」
という仲間たちからの返答。遠いぶん、わからないぶん、
勝手に足がガクガクふるえる。大雨のときもそうだった。ひどい時ほど
島の人たちは口をつぐんでいたから。心配させまいとして、
本当を言わないときがあるから。突然、そんな不安な状態になって、
夕方からの台本の直しに手をつけられないまま
時間が迫ってくる。4時入り。15分遅れるね、と万里子とプーリーにライン。

会場には着物をきた万里子やばたこ、まきちゃん。
アサヒのメンズたちもこれから着物に着替えようとしている。プーリーがいない。
ざわざわっと、629の前みたいな心地よい緊張感に包まれ、
リハーサルをはじめる音チームの人たちといっしょにマイクテスト。
300人の大広間に届ける声、かっこつけてられないぐらい、声を張らないと
届かないことがわかる。一番後ろにいてる築山ママに「聞こえる?」
大きなマルを出してもらいながら、音声チェック。
うー、今日はひとり司会か?んなわけないだろうけど、と思っているところに
1時間半遅れて、相棒・プーリーが到着。「え、5時30分集合ちゃうかったん?」
ま、えっか。いそいで通しのリハーサル。
アサヒ全員の立ち位置をチェック。着物で舞台に立つと圧巻だ。
それだけでああまた泣けてくる。

関西のなかでもこれだけの世代のクリエイターや業界関係者を
家族のような温度で集められるのは、アサヒセイハンしかないだろうな。
私たちが20代のはじめのころに出会った業界の大先輩たち。遠い存在だった
写真家さんやイラストレーターさん。デザイン会社の社長さん。
スタイリストオフィスのきれいなおねえさん。奇抜でかっこいいおねえさん。
自分がまだ右も左もわからない頃の無謀な時間を思い出す。
プーリーがまだアメ村のオフィスにいて、万里子がやっと制作プロデューサーとして
独り立ちしたころで、よく3人でつるんで仕事もしたし、ごはんもたべた。
みっちゃんが「社会人の幼馴染やな。写真とったろ」といってくれて
あ、社会人の幼馴染っておもしろい、ほんまにそやな、と思う。
そういう、社会人の幼馴染がもう20年以上のつきあいとなっていて、そのなかで
縁が遠くなる時間もあったし、なくなった縁もあるし、それでも
こうしてまた太くなる縁もあって、やめないでいるとこういった時間に出会えるんだなあ、と
胸が熱くなる。

さあ、スタート。いつもより声をはって、万里子とパパの社長と会長就任を
私とプーリーの声で高らかに宣言するのだ。全力で、この300人の前で宣言するんだ。
みといたってね、がんばるから。そこにおってね。なんもせんでええから。
有言実行。覚悟をきめた女の姿は美しい。どんなドラマが起こっても、万里子はもう
やわらかいちからで受け入れることができる。十分にその準備を重ねてきた。
私たちは生まれ変わる。もう生まれ変わっている。

新会長の挨拶。原稿棒読み。はじめから震えて噛み噛み。態度に出てしもうとる。
誰よりうれしいのはこの人なんだから。お礼の言葉をいくつ用意しても足りない。
「ねえねえ、築山会長の原稿なんで棒読みなん?美香さんが考えたのを読ませたの」
「違うよ。ずっと前から一生懸命考えてて、直前にも、頭に入ってるコトバで言った方が伝わりますよと
伝えたんだけどね、本当に緊張していたんだとおもう。でも、そこがいつものパパらしくなくて
本当によかった」と後で、よみうりのふじもっちゃんと話した。
そういえば、ふじもっちゃんは美術部に入社しました、という時から知っている。
最近京都の町屋に引っ越した話をしていると「美香さん、これが私なりのマチオモイなんです」と
話してくれた。フェイスブックでつかずはなれず、近況をなんとなくわかってる関係に
最近はなっていたけど、こんなふうに話してくれるとその距離感も素敵だ。

アサヒのメンバーがずらりと舞台にならんで、
ひとりひとりの社員の名前を読み上げる。愛をこめて読み上げる。これからの万里子を
支えてくれる一人ひとりだ。柳井さんの本を読んでいたらこうかいてあった。
「社員には100%向き合うこと。どれぐらいかなんてない。100%だ。」 
いい温度になってきた。そう思える。外から見てそう思えるメンバーになってきている。素敵だ。

真之介さんの挨拶があって、マイク遠いから全然聞こえない、と後ろの方の人に言われながらも
それぞれいろんな思いがあるので、話がとても楽しい。
本田さんの乾杯の挨拶にそれは続いて・・・もう、ここは苦笑いを通り越しての愛しかない本田さんの万感の思いだからみんなが拍手を送りたい気持ちになるほどの、長さだった。途中でビールグラスを渡すも
そっからまた。いや、それぐらいの時間がいるのだろう。経営者として、友達として、親子として、
いろんなものを継いでいく友達とその娘に送りたい気持ちが山のようにあるのだろう、と。そういう時間を
わからないひとはこの場所にはいない。後ろの方のかたごめんね。

歓談中に万里子が全員のお席をまわってご挨拶をする。時間を見計らないながら、
進行を確認。みそののホールの方と料理の出すタイミングなども打ち合わせしながら進める。
会場にはゆかこや和美ちゃんもきてるから、挨拶にいこうとしたらプーリーに
「今日はいかんとこおもってるねん。司会者やし、ここにいてよ」といわれて、あ、せやな、と
思って、ビールのんで、伊勢海老のええとこをがっつりいただく。うまい!!
アサヒにいたまこっちゃんが挨拶にきてくれる。レンが戻ってくる。「オレ、あんま知らないんすよね」
こういう場所がにがてなモヒカン男だ。とてもよく似合っててかわいい。
白い着物姿の万里子がだんだんと後ろの席の方にまわっていく。その姿を追っているだけで
本当はなんども涙が浮かびあがっているのだよ。よくここまで来たね。いっしょに頑張った日も多かったけど
ひとりでよく耐えたよね。でもやっぱりいっしょに走ってきたね。こっからはいっしょに歩こう。
後ろをちゃんと振り返りながら、寄り道しながら、背筋のばして、少し遠くをみながら、歩こう。

15分押しでライブペイントをはじめます。鉄舟と學さん。久しぶりのコンビネーションだ。
建一郎、チャーリーも舞台に立つ。大正琴の前垣さんがとても美しい音色を奏でている。
子どもたちが舞台のそばにきてかぶりつきで舞台をみている。面白いんだねえ。不思議な現象。
少しなつかしい二人の間合い、鉄舟の踊るような動きと、學さんの岩のような安定感、
紡ぎ出される繊細な墨の世界。浮かびあがる鳳凰。「万里子の着物の柄とおんなじ絵だったね」
と築山ママが驚いている。

ライブの終わりを待って、万里子の登場だ。本日のフィナーレ、万里子の挨拶。
そこに立っているだけでみんなが何十年も時間を巻き戻しただろうし、それから、これから
先の不安を越えていける仲間を得たりというような安堵を感じだのではないかな。
こんな素敵な人たちが大阪にいるよ、と想えたんじゃないかな。
私は司会席から、ハンカチをとりにいって、こっそり。涙こぼれないはずないです。
よくぞ、この場に立ちました。ここにいる人たちがこれからのあなたを見守る人たちです。
社長就任おめでとう。すごい決断力。
私にはまだまだできそうにないけど、いや、やっぱりお互いに
刺激をしあいながらのこっからを、
そう、少し先のしあわせに向かって、築いていきましょう。
長くなった。本田さんじゃないけど、やっぱり、私が挨拶したとしてもこんぐらいになるのかな。
たとえばあと20年後、次の社長交代のときに
こんな場面があったら、たぶんプーリーがどうしようもないぐらい
長話をするんだろうな。そのときは遠慮なくビールを後ろからかけてあげよう。
愛をこめて!


2016年10月22日 10:45  |  
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