PROFILE/MIKA MURAKAMI@188《コピーライター》
瀬戸の海を産湯に、波を子守唄に育ち、大阪はミナミの繁華街・坂町に生息する女コピーライター。藤原新也の「人間は犬に喰われるほど自由だ」を敬愛し、「はて。ほんとうに人間は犬に喰われるほど自由か?」と日々思い巡らしながら、2008年2月よりひょんなことから柴犬まめと暮らす。はて。きみにほんとうに伝えたいコトバはなんだろう。そんな、きみとわたしのこれからブログ。
うちのセンニチマエの家のまえの側道に
生まれたての小鹿のように、
立ち上がりたくても立ち上がれなさそうなじいさんが
いて。「え、だいじょぶうですか?」
と声をかけたら、「あ、大丈夫です、だいじょうぶです」と
本当に申し訳なさそうに助けを拒否されました。
センニチマエはなめてはいけないマチなので
それ以上、深入りしなかった。
当たり屋のような人もいるだろうし。
そのあと買い物行ったら、土砂降りになって
帰ってきたらさっきの小鹿じいさんが同じ位置にいて
でも、傘をさしていた。
それでもなんどか立ち上がろうとしていたので
いったん事務所にもどって、ろむちゃんにはなしたら、
いっしょに外行ってくれて。
「大丈夫ですか?お手伝いするので、せめて、
雨のかからないところに移動しましょう」
全身が硬直して、立ち上がれないそうで、
ろむくんが肩をかして、なんとか、大雨のなかマンションの
ロビーのとこに移動。
「救急車よびますか?」「いえ、だいじょうぶです」
やっぱり深入りするのはよそうとおもって。
そこで手をひいて、もどった。
しばらくして雨がやんでみにいったら
もういなかった。
その町のルールがある。
やさしさは押し売りであってはならない。
でも、見て見ぬふりはしたくない。
ぎりぎりのやさしさがせめて、
小鹿おじいさんのかたくなな心をあったかく
してたらいいなとか。
佳苗んちの福井のじいちゃんが亡くなって
なんとなく。