PROFILE/MIKA MURAKAMI@188《コピーライター》
瀬戸の海を産湯に、波を子守唄に育ち、大阪はミナミの繁華街・坂町に生息する女コピーライター。藤原新也の「人間は犬に喰われるほど自由だ」を敬愛し、「はて。ほんとうに人間は犬に喰われるほど自由か?」と日々思い巡らしながら、2008年2月よりひょんなことから柴犬まめと暮らす。はて。きみにほんとうに伝えたいコトバはなんだろう。そんな、きみとわたしのこれからブログ。
こころのなかでずっとブレーキを踏みながら
外向きにはアクセル全開で踏んでいる状態。
(調子にのるな)
(その行為は誰かを傷つけたり淋しがらせたりしてないか)
(なにかを忘れてないか)
(雑になっていないか)
というような問いかけを繰り返している。
5日間で300万以上もの資金をクラファンで集めるという
成功体験というものを体験した。
リターンという仕組みがあるものの「お金を集める」
ということに抵抗や不安があったのは確かで、正直びびっていた。
これまでのように「展覧会にきてください。気に入ったら作品を買ってください」ではなく、はじめから「あなたのお金をわたしに投資してください」というお願いだからだ。自分のなかで文脈をきちんと整理しておかないと堂々といられない。
母のいうように「甘いお金じゃないよ。」
「お金を集める」=「期待を集める」 お金をめぐんでもらうのではなく、その人の「期待」をお金にかえて私たちは、やりたいことを実現していく。誰かができないことを背負って、やりとげる。ってことなんだろうな。と。
今回、本当に長い時間をかけて188全体で話し合ってこのクラファンプロジェクトに挑んだ。ずっと「大盤振る舞い」してきた629の姿を進化させたかった。でも629でありたかった。アートを無料で垂れ流している状況に違和感があった。展覧会をやっても「學さんの絵は高くてかえない。見るだけ」「じゃ、売れる絵ってなに」のよくある葛藤の答えが見いだせなくて、學さんは、次第に次に描きたい絵、を見失いそうになっていた。ボディペばかりやってて。ぜんぜん会社にもこない状況に、佳苗とわたしのなかでは「ただのエロジジイ」に変わって愛せなくなっていた。で、しばらくして見方を変えた。「このボディペをちゃんと終わらせてあげなければ」と思ったのだ。絵に戻ってもらうために。そのためには、最上級のボディペの昇華作業が必要だ。ずっとつくりたがっていた作品集を「世界一のクレイジーな本にしてやろう」と鼻息あらく万里子にプレゼンをして、20年目の629と位置付けた。
その頃はまだコロナがやってくるとは思わずに。
状況は一変した。演劇のシゴトがなくなった。音楽のシゴトがなくなった。私たちの会社を維持するお金がなくなった。クラファンを考えていたものの、ただ、この商材で勝負できるタイミングではないという世の中の空気を待った。待ったからたくさん考えることができたのも事実。
クラファンは自分の周りの人たちに対して大切な「最後の切り札」をつかってください、というような行為だとおもっていたので、怖かった。ただの「予約販売」の方が、マージンなくていいやん、クラファンで17%もマージンとられながらやる意味あるん?とたくさん考えた。
「本気でお金集める気あるんか?」
と社長にいわれて。いやいやいや・・・このご時世、「人助け」でもない「好きなコト」にお金だすかな?と後ろ向きにおもってた。
「助けてください、というクラファンはしたくない」
と北窓にいわれて・・・なるほどなあ、と思う。じゃあ、どこに人は共感して応援しようとおもうのだ?「~~のために」ではないところにお金を出すかな。いや、投資する、と考えればいいのか。
「割引価格を付けるって・・・アーティストに対して品がなくない?」
「リターンの選択肢多すぎて、迷わない?」
「オリジナルブックカバーに亀甲縛りするんはいいけど、単価600円もするんですけど・・・どうします?」
「20種類いける? もっと増やす? 」
たくさんの話し合いをしてきて、ひとつひとつを決断していった。
わたしたちは中身(本)をつくることだけがプロフェッショナルではなく、「伝え方」のプロであることも大きい。
一流のコピーライターがキャッチコピーを書き、気鋭のデザイナーとエンジニアがWEBサイトを組み上げ、広報戦略を練るのだ。ブランドストーリーを面白がってもらえるように、學さんの作品力だけじゃなく、學さんのキャラ。カッコ良さだけではなく、可愛げや、人から愛されるその不思議なちからまで伝わるような、360度がたの広報展開がいる。このコロナ自粛のなかで希望になるような、生きる力をつたえることが必要だ。と、ずっと考えて準備してきて、それを形にしてきた。そして、いまもつぎの作戦を頭のなかでシミュレーションしている。同時進行だ。走りながら考えている。きょうも生み出している。というリアル。
「へえ、クラファンってお金あつまるんや。私も写真集つくりたい」
うちのプロジェクトをみてそういった人もいたようで。そう見えたらそれでいいけど。お金が集まるのではなく「期待を集める」のよ。と伝えてあげたい。そして、その期待は、昨日今日つくられるものではなく、ずっとやってきたことに対しての「信頼」のたまものだ。
629をずっと支えてくれていたモリサワのたけしさんが、20万もクラファンしてくれて。御礼をしたら「ずっとワクワクさせてもらってるから」と返信があった。
そういうことやねん。
そっち側に立てるひとはそこに立たなあかん。
で、せっかくなら楽しそうに立っていたいと思うから
仲間を大事にする。いっしょにそこに立つ。
家族も大事にする。まめとみつが元気でいてくれな。
時代のキーワードは。サドとマゾです。
いま強く生き延びる人は、サド体質かマゾ体質のどちらか
やと思うの。