PROFILE/MIKA MURAKAMI@188《コピーライター》
瀬戸の海を産湯に、波を子守唄に育ち、大阪はミナミの繁華街・坂町に生息する女コピーライター。藤原新也の「人間は犬に喰われるほど自由だ」を敬愛し、「はて。ほんとうに人間は犬に喰われるほど自由か?」と日々思い巡らしながら、2008年2月よりひょんなことから柴犬まめと暮らす。はて。きみにほんとうに伝えたいコトバはなんだろう。そんな、きみとわたしのこれからブログ。
まめ。
きみがこれから暮らすことになる町では、
きょう、11年ぶりに大雪が降りました。屋根が真っ白になって、とてもきれい。
ゆきやこんこん。あられやこんこん。
柴犬ってのはゆきのなかをきゃんきゃんと走るイメージ、日本昔話的に。
私は思ったよ。きっと、この雪の日が、きみとの大切な日になるだろうって。
猫はこたつでまるくなるような凍てつく寒い寒い寒い日だったけど、
ビニールの傘をさして、私、きみのところにいきました。
本当はその前の日も、その前の前の日も、こっそりと
きみに逢いにいったのだけどね。
今日はどうしても、なにがあっても、無性にきみを迎えにいかなきゃ、って
思ったんです。だって、雪が降ったのだから。
雪が降って、親友のマリちゃんが、ニューヨークという外国に旅立って、
「よし、私も!」って、なにか特別な決断をしようとしていたのかもしれないね。
このごろの私はどうも決断力がヨワッチイ。性根がしょぼい。朝寝坊。自堕落。
朝がほんとに駄目になった。なのに、雪。目覚めたら冷やんと雪、いちめんの雪で、
こんな小さな町の路地や窓辺にも、ほら、
まるでまつ毛に白銀のパウダアのせるみたいに、
均等に降ってくれるんだね、雪。ゆき。ユキ。きみに逢いに、ゆき。
必然とか偶然とかわからないけど、縁というエネルギーのことは、私、
なにかしら信じている節があるので。なんてうそ。縁なんていったらカッコいいけど、
単なるロマンチストの直感です。
「行こうよ~」っていったけど、おとうさんは寒いから嫌だって。仕方ない。
ひとりできみに逢いに、ゆき。
でもね、抱っこできなかった。
たくさんの雪をきしきしと踏みしめて、転ばないように歩いてきたのに、しょぼい私。
きみを目の前にしたら、きみと本当に出逢っていいのかわからなくなって。
これからの長い時間をいっしょに過ごしていける自信が
いい加減で、打算的で、突発的で、しょぼくて、あやふやな気がしてね。
こんな私、きみ、しあわせにできるのか?
「きみを一生しあわせにします!」。花婿みたいに、いえない.
どんな覚悟でいってんのよ、いえんのよ、ってね。不安。不安、未完成の、覚悟。
でも、きみがきたら、きっと雪の日に雪と遊びたくなる
雨の日に雨と遊びたくなる昔みたいなお日様のしたの私に出会えるような気がして。
いっぱい考えました。いっぱいいっぱい悩みました。
だけど、とうとう、きみを抱っこせずに帰ってきたしょぼい私です。