PROFILE/MIKA MURAKAMI@188《コピーライター》
瀬戸の海を産湯に、波を子守唄に育ち、大阪はミナミの繁華街・坂町に生息する女コピーライター。藤原新也の「人間は犬に喰われるほど自由だ」を敬愛し、「はて。ほんとうに人間は犬に喰われるほど自由か?」と日々思い巡らしながら、2008年2月よりひょんなことから柴犬まめと暮らす。はて。きみにほんとうに伝えたいコトバはなんだろう。そんな、きみとわたしのこれからブログ。
「地元がきらいだった」とSさんは言いました。
横浜生まれ、横浜育ち。22歳まで横浜のまちがSさんをつくってきましたが、日々、建っていく高層マンションや変わっていく商店街の姿をなんだかなあ~という感じでみてて、大学時代にちょうど地域デザインとか、そういったことが学科に入ってくるはじまりのような時期だったこともあり、デザイナーの梅原真さんへの憧れもあって、地域とデザインにすごく興味をもっていきました。
「たまごトラベルという屋号は、個展をしたときのタイトルで。ひとり旅行代理店のつもりでつけたんです。ひとり旅が好きで、あまり目的を持たずにいろんなとこにいくのですが、26歳ぐらいのときに「日本国内で、あと行ってない県、10県ぐらいやな」と思って制覇しようとおもったんです。で、ぜんぶまわったときに、47都道府県を自分なりに紹介する、本や展示物をつくって展覧会を開きました。1冊ずつあるんです、島根の本とか、山口の本とか・・・あ、しまなみとかもいきましたよ~」
旦那さんのご実家にたまごトラベルの事務所があって、そこにいって、当時の本を見せてもらう。びっくり。これは「ひとりマチオモイ帖展覧会ではないのか!!」というぐらい、たくさんの県を冊子にしたものが保管されてらる。山口県を旅した冊子には「長州藩」というタイトルがつけられていたりして、そういうのも面白い。マチオモイ帖はガイドブックにないもの、というフレーズをよくつかうけど、彼女の冊子たちもまさに自分目線をたいせつに切り取った、そう、勝手につくった町の本だ。
「これは、〇〇県出身の方の誕生日プレゼントとしてつくったんですよね。ストーカーですよねまるで」と笑います。誰かのために、サプライズで。それ以外は、勝手に。誰に頼まれるわけでもなく。つくる動機はそんなかんじだ。マチオモイ帖のクリエイターのなかでも、冊子部門でこういった本を過去につくってきた人を選手権してみたら、ナンバー1に輝くには間違いないと思う。クオリティも高い。
まあ、そういった背景がある人だから、このクオリティの「みなみやましろ村帖」ができたんだね~とつくづく思う。
この村で、Sさんは、日本各地をめぐる旅を「もうしないですね」ときっぱり。結婚をして、子どもが授かって。ここからはもう動かないと思う、といいます。とくに、他の場所にくらべてこの村が特別どー、とか、特別こーとか、違うという意味ではないけれど、人の縁だなあ、それしかないですね、と。静かに話してくれました。
「みなみやましろ村帖」の1冊目は、導入。ざっくりしたガイドブック。2冊目は、むらごよみ、として村の歳時をカレンダー風にして紹介。まだ2冊ですが、こっから先、細分化して、「郷土食」「お茶」とか、テーマを決めて、毎回だしていこうと決めています。娘が大きくなったら、このコ目線のマチオモイ帖ができたらいいなとも思ってます」